2008年10月18日土曜日

一ヶ月ぶり

お久しぶりです。
もう、今タームも終わり、いよいよ卒業後何をするか、をさらに真剣に考える日々が続いている今日この頃です。来週のFinalに向けて、勉強をしているところですが、今日はどうしても、備忘録として、かきとめておきたかったことがあるので、キーボードを取ります。

昨日、JPMorganのCEO(日本でいえば頭取)のJames Dimonさんの講演がDukeでありました。最初の30分は、最近の出来事(BearSternの買収、リーマン倒産、AIG救済、WaMu買収、メリル売却、FRBからの公的資金注入)を30分くらいお話され、その後は学生からのQ&Aで30分、合計60分でしたが、以下の点がとても興味深かったです。

1.Leaderとして何が重要か
「いろいろなタイプのリーダーがいるから、一つどのリーダーにも共通していることがあり、それは
Preparation(準備をすること)を怠らないことである。例えば、このCreditcrisisの中、特定の予見して行動することは不可能に近いので、最高のシナリオ、最悪のシナリオをそれぞれ想像し、それが起きたときにどう対応すべきか、準備することが、リーダーとして一番大事だ、と思う」と仰っておりました。
自分は、この夏某投資銀行でサマーインターンをやらせていただいたのですが、その事前研修(NY)のオープニングで、本社のマネージングディレクターの話を30分ほどきく機会があったのですが、その方も、「成功するために必要な要素はいろいろあるが、大事なのは、Hyper Preparationだ。」と仰っていました。準備の幅、深さ、重み、を再認識させられました。

2.日本経済
Dimon氏は、82年にハーバード大学のMBAを卒業されておりますが、その当時は、日本が、技術力・組織力・労働生産性などにおいて、米国を上回るパフォーマンスを発揮していて、いわゆる「日本脅威論」「日本に学べ」の時代だったそうで、そういった思いがあり、アメリカの栄光を取り戻せ、じゃないですが、この20年間、金融やITで世界をリードする強い経済を築いてきたんだ、仰っておりました。そのときから20年たった今、私も肌で感じておりますが、日本の価値・存在感は、随分落ちてしまいました。MBAの授業でもでてくるのは、トヨタのKanbanくらいですし、学生のアジア興味は、China一色です。日本人として、次の20年で、世の中に、日本特有のよさ、をもっとアピールしていき、世界における日本の存在感をアピールしていきたい、という熱い思いを自らに感じました。

3.今回の金融危機のリアリティ
今回の危機で、人々がPanicになり、一斉に銀行で運用していた金を引き上げ、それにより、銀行としても企業に貸すお金がなくなり、企業もCBを発行できなくなり、ワーキングキャピタルの捻出手段として、冷え切った市場でWrite-off覚悟で、資産をLiquidateし、下方修正を迫られ、それがまた市場にネガティブなインパクトを与える、というViciousCycleに入っている、ということを、生々しく話しておりました。この話をきいて改めて思ったのは、今回の危機がこれまでと大きく違うのは、この10年の急速な技術革新(IT)により、金融市場に対する企業と消費者の距離、及び異国間の距離が急激に縮まったこと(On-lineで手軽に各国の株や投資信託を買えるようになりましたし、企業の資金調達手段も同様に格段に増えました)、それにより世界レベルでこれまで以上に、一国の金融危機が、各国の経済に波及するという相互依存の関係を強めている、ということです。そんな中で、大事な事は、Accountabilityと真実を見極めようとする態度、です。昨年エンロンのケースを勉強したときにも思ったのですが、金融商品の複雑化およびそれを裏付ける金融的理論(エンロンの時は、エネルギー供給の契約をばんばん結び、その契約を資産として、SPCを作ってうっぱらい、その資産から生み出されるFutureCashFlowを予測し(ここに一つ目の裁量余地)、それを現在価値に直し(現在価値に直すための割引率設定に二つ目の裁量余地)、資産価値を作り、それを販売して稼いだり、抵当にお金をかりたり、なんてことをしていたし、今回は、MBS(Mortgage Backed Securities)で、信用リスクの高いサブプライム層に住宅ローンを販売し、その貸付利息を当てに、証券化し、さらにはそれをミックスジュースして、だれが借手か、まったくわからないようにして、販売していた)をつくり、本質を隠蔽化して、マーケットを騙す(金融商品を作った人からすると、予測が外れた)わけです。本質的になぜもうかるのか、どこが怪しいのか、がわかっている人は、今回の件で、直接的な被害を受けなかったでしょう。改めて、本質を理解できないものには、手を出さないこと、また本質が理解できるよう、情報開示を徹底させること、そういうことを、もっと金融機関側から、一般投資家に働きかけるべきですし、投資家もそういう態度で投資に望むことが、各国経済の相互依存が深まり、それが今後も加速することが自明な中、長期的なキャピタルマーケットの質の向上につながるのでは、と思いました。